July 25, Monday私はものすごく晩生でした。女子高女子大ということもあるかもしれませんが、男性に興味なんて持ったことがありませんでした。
そんなある日、大学3年の成人式の日です。私は親しくしている先生とある能楽堂に行きました。そこで曲の合間にロビーで話をしていると、背後から、
「先生!」
と言う声が聞こえ、私は後ろを振り向きました。
そこのいたのはダークのスーツを着ている青年。彼は181cmの長身痩躯で、いかにも聡明そうでものすごく品のある面立ちをしていました。颯爽と歩いてくるその青年に私は一目惚れしてしまいました。
その人は先生と懇意にしている人でした。そして、すぐ二人は紹介されました。
そして、たまたま、本当に偶然、私が卒論のテーマに選んだ事柄について、彼は造詣が深く、先生はいろいろ教えてあげるように、とおっしゃいました。
彼は気持ちよく引き受けてくれました。
そして、私たちの交際が始まりました。
彼は、いわゆる上流階級の出身で有名大学の修士課程で数学を学んでいました。私なんかがとても付き合える相手ではなかったのですが、どういうわけか付き合い始めました。
でも、付き合うといってもそれは昔の話。もどかしくなるくらい清らか(?)な付き合い方でした。
まあ、ここでは彼の話はメインではないのでいろいろ割愛しますが、私たちは10年程付き合いました。
と言っても、普通の10年ではありません。元々彼は東京の人。そう頻繁に会うことはできません。しかも、途中3年程アメリカに留学、フランス、イギリスにも短期留学したりしていました。おまけに学者肌の彼は論文を書き始めると、二ヶ月くらいは音信不通になります。しかも、勉強中に電話で邪魔されることが大嫌いなため、私から電話することはご法度でした。
ちょっと寂しい恋人同士でした。
私は彼がとても好きでした。もし彼が私と同じくらい好きでいてくれたらもっともっと好きになったでしょう。
彼の口癖。「僕が一番好きなのは数学。二番目は男の友達(二人)、三番目が君」。
それでも女性の中では一番好きでいてくれました。彼はもともと人を愛する容量が少なくて、でも、その少ない容量を目いっぱい使って私を好きでいてくれました。
それがわかっていたから、10年も続いたのでしょう。
当然のことながら結婚話も何度も浮上しました。でも、この結婚は彼のお母さんも意に沿わず、私の両親もあまりにも身分違いだから、と反対されました。その反対を押しのけるだけの情熱が二人にはありませんでした。
いえ、彼さえそのつもりなら、私はどこまでも付いていきたいと思ってしましたが、彼には反対要素をひとつひとつ潰していくだけの気持ちがなかったのです…。
私たちの関係はいつの間にか消えてしまいました。
…残った思いは、「もっと愛されたかった…」です。
昔のコマーシャルに「少し愛して、長く愛して」と言うのがありました。それで言えば私たちの関係はまさにそれ…。でも、少しでは一歩が踏み出せません…。最初だけでもたくさん愛してくれないと何も進まないのです。
「愛されたかった」という思いは、彼と付き合っている間も、別れた後も続きました。
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